チームについて考えよう!書籍「チーム・ジャーニー」の感想

前作「カイゼン・ジャーニー」は一人から改善を始め、やがてチームを動かしていくストーリー仕立ての快作だった。今度はすでに存在するチームをどう改善していくかがテーマ。今回も感情移入できるストーリーが素晴らしく、全編に渡って楽しく読むことができた。 本作はチームを改善していく前編と、チームをまたいだプロジェクトを改善していく後編に分かれている。

以下、箇条書きの部分は自分メモ。


前半

転職早々配属された部署でチームリーダーを言い渡される主人公、太秦(うずまさ)。チームとは名ばかりでそれぞれのメンバーが個人商店のように動いている。一癖も二癖もあるチームメンバーを前に太秦は「チームとは何か」を体験していく。

  • アジャイル開発のフレームワークありきではなくソフトウェアの開発の本質に迫ることが重要。

    • アジャイル開発」自体がやりたいことではない。正しくソフトウェアを開発することの大切さ。
  • いきなりいろんなプラクティスを行ってもダメ。レベルに合った成長を促すことを勧めている。目標を階段状に並べた「ジャーニー」の設定。

    • 成功体験を得ることでチームは成長する。そのために着実に小さい成功を積み重ねてチームに合った成功体験を得る必要がある。そのための「ジャーニー」という点が素晴らしいと思った。
  • 共有ミッションに対してリードを設定する

    • ドラッカー風エクササイズで見えてくるメンバーの特性から、その分野の方向性を決める「リード」を設定する。こうすることで何でも多数決で決定する、行き過ぎた民主主義から離れることができる。スピードは重要。

後半

「チームとは何か」について考え行動していくうちに太秦のチームにも一体感が出てきた。そんな中、会社の一大プロジェクトとして複数のプロダクトを一つの製品として統合する話が持ち上がる。チーム間のコミュニケーションすらうまく取れない状況から、どのような手法で製品にまとめ上げるのか。

  • チームを超える(越境)するがテーマ。

  • 他チームとのやり取りはスプリントごとに輪番体制とする。

    • これは運用が開始されたチームにも適用できる。バックログを倒しつつ、突発的な問い合わせ対応や障害対応に適応できそう。
  • みんなができることにこだわりすぎない。属人化することは個性が出ているということ。その人がいなくなってもなんとか対応できるプランBを目指すチームを作る。

    • ここは「リード」を設定する考えと共通している。その分野に詳しい人の特性を活かす。
  • 俯瞰と詳細。どっちかひとつだけではだめ。視座は高く視野は広ければよいというものではない。時には視座を落としてコードの隅々まで見る必要がある。重要なのは工程、広狭を自分たちの意思で行き来できるようになること。

    • ベースとなる視座はマネージャーとプレイヤーでは異なって当然だが、時々行き来することで見えてくるものがあるというのは同感。

この本の素晴らしい点は、現実にありそうなシチュエーションを散りばめたストーリーだけにあらず、章末にチームのフォーメーションがどのように変化していったかを時系列で並べている点にある。章を重ねていくごとに主人公である太秦と一緒に「思えば遠くへ来たもんだ」と思わせる仕組みが面白い。

チームビルディングはなにか一つ改善を行えば終わりではなく、常に改善点を求めてチームの編成は移ろいゆくものだと感じた。 私のチームメンバーにも小さな成功体験を積み重ねて、より遠くへ共に歩んでいきたいと思う。

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